ブラインド・タッチ/伊那 果
つい
これがまた
癖のように
パソコンの
スタートボタンを押して
それで何かが
始まるような
気分でいる
画面の陰に
立ち上がる
1匹
なにものだろう
ブラインド・タッチ
しゃかしゃかと駆け抜ける
たくさんの記号は
決してどもったりは
しなくて
それだけで
すごい、何者か、になったような
誰よりも早く
レスポンスを、するために
ASDFGHJKL
ASDFGHJKL
計算されつくした
2段目の列を
体に刻み込む
あすどふじゅくる
あすどふじゅくる
そのうちに
あすのない
画面の中に
どふじゅ
が
来る
あす
どうじゃ
といいながら
来る
あすどうじゃ
どうじゃろうね
あすは見えない
どんなに呪文を唱えても
やっぱり今日も
なにも始まらなかった
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