色のない街に行きたかった/
 
赤い空に埋め尽くされた僕の街を
一羽の鳥が見おろして
どこまでも どこまでも 飛んで行かない

落下した鳥たちを
踏みしめて歩くその頭上で
擦り切れたフィルムをなぞるように
その光景は繰り返されてゆく

+

歩いているとつまづく
というのがこの街の決まりで
「それなら止まっていればいいじゃない」
と この街にいない誰かの声が
毎日同じように一定の速度で通り過ぎる

どこまでも行けない僕のすることと言えば
目を閉じて どこまでも青い空を眺めることだけだった 

その空が広がるのは 当然僕の街ではなく
何か ずっと前に読んだ物語の
遠い遠い風景を切り取った
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