一跨ぎ/龍二
高く掲げた指と指の間を疾走する真夏を思わせる光。公団住宅の群れの中にすら日陰の無い正午。反射角によっては見えなくなる歩行者用信号を通過する。
アスファルトの舗装道路から土の道へ。そこに立って、人がスケジュールと帳尻合わせに飲み込まれていくのを見ている。何事も無かったようにずっと変わらない日付を示す日めくりカレンダーを眺めている。
振り返った時に、何かが其処にあると信じている。土を蹴り上げて、「メソメソするなよ、女じゃないんだから」と、立ち込める草の匂いに言った。
戻る 編 削 Point(1)