螺鈿紫檀の五弦琵琶/aidanico
 
鹿が霞ヶ浦で涙、
鬼は玄孫と七並べ
蟹が伊勢に店出すと、
繁盛したよと鰻売り
“手前の名前なんてとうの昔に忘れんした”
八墓村で女房の
首を桜の木の下に、
満開の中に埋めたのさ
「…未ダ放浪癖ハ直ラズ…」
“何時かのやっかみなんてええい儘よと捨てんした”
宇治で地頭が蛆に混戦
――――守備は如何?
「…未ダ放浪癖ハ直ラズ…」
「…未ダ頑ト売リ気ハ存ゼズ…」
「…未ダ伏見ノ稲荷ニハ参ラズ…」
三日三晩で寝ずの番よと、
虫の知らせは未だかいな
未だかいな。


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