渦巻き/Ohatu
 

 少しずつ暖かくなって
 あたしは悩みます
 
 花の頃もすうと過ぎ
 若葉のしずくは薄ら青く
 その奥には陽の輝きが見えます
 緩い風が吹けばなびき
 雨が降ればしなだれ
 また陽を浴びれば輝きます

 若葉の呼吸には偽りがなく
 要るだけのものをありがたく
 己の身体に取り込みます
 汚れた都会を受け入れて
 自身はただ、喜ばれるものを
 静かに配り続けます

 若葉の命はふたやかな幹
 削れ、抉れ、崩れかけた古木にも
 包み込むように命がしげります
 そこにはやがて姿を変える青虫や
 飛ぶことの出来ない産毛の雛や
 こぼれ落ちるあたし、おいしげる

 命はつないでこそ、と
 そんなふうに聞こえます

 夏になったら、使い古した空の巣を見て
 あたしは何て言うのだろう

 秋になったら、落葉のひび割れを見て
 あたしは何を思うのだろう

 だけど今は、少しずつ暖かくなって
 あたしは、ひたすらに悩みます


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