それでも世界は美しい/小川 葉
 
母さんと間違えて
息子が僕に抱きついてきた

首筋に
ぴったり口をくっつけて
おっぱいみたいに吸ってきた

ああ
母さんになるって
こういうことだったんだ

時計を見ると朝の六時
そろそろ実家の母さんが起きる頃だ

朝早くから
田んぼに行ってきた父さんが
玄関のうるさい戸を開ける音がする

離れて暮らしても
たとえ家族でも他人であっても
それでも美しい
世界はひとつここにある

ああ
父さんになるって
こういうことだったんだ
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