お伽噺の林檎/水島芳野
 
紅い林檎の入った籠を
受け取った日から始まった

幸せになりまた忘れてく
ありきたりな祈りだけれど
真紅の林檎に潜んだ毒を
誰も見つけはできないのなら

目を伏せそっとひれ伏しなさい。
頭(こうべ)を垂れて手をとって
恭しくとも愛の無い
あの温度で触れるがいい


蛇の言葉に耳を貸し
紅い果実に触れるなら

私のことはお忘れなさい
真は誰しも知らないのなら
どうしてあなたを引き止められる
私は口を噤みましょう

目を伏せそっとひれ伏しなさい。
頭(こうべ)を垂れて手をとられ
恭しくとも愛の無い
あの温度に救われなさい


褪せた欠片に目を配り
唇だけでも微笑みなさい


壊れた破片に気づきつつ
折れた翼で飛びなさい。
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