「泪の先」/菊尾
そうやって欺こうとしている。
知らない顔で口ぶりだって素っ気なくて
そういう態度、見え見えだから。
上手いって思ってるの、あなただけ。
お上手って手を叩いては褒められないよ。
左目からあふれてこぼれた。左目だけから。
あたしの泪はカーペットに斑を作った。
喚いたりできたらそりゃ多少は晴れるのかもしれない。
でもこんな泣き方じゃ、全然ダメ。
なってない。泣き方がなってないの。
こんな時ぐらいの作法ぐらい、身につけておきたい。
違う、違う、って認めないあたしのこと。
違わない、違わないって否定に伴う肯定のあなた。
ストイックになんてもう流行っ
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