柔らかな残像/水島芳野
眩いばかりの、障子の向こうを染めた光
君が閉めた切り取るような音
断片的な記憶は、まだこの胸に色鮮やかです。
深爪のゆびで突き放された夜明け
あの人のゆびはいつだって、私に触れるときは深爪だった
痛くないのですか、
という問いかけと
痛くないよ、
という答えが
あまりにも当たり前だった日々
(過ぎ去りし記憶)
枯渇した胸の泉を埋めるように
あの人はゆるゆると埋もれていく
深爪のゆびで突き放された夜明け
別れにしてはあまりにも優しすぎた、
君の失敗、
甘い記憶。
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