地上の楽園 /服部 剛
 
幻のビル群が立ち並ぶ 
都会の空の彼方から 
沈む夕陽の声がする 
( わたしはこの国を、
  お前に与えよう・・・ ) 
群衆に紛れた彼は 
空虚に覆われた日々から 
脱出する非常口を探していた 
ビルの間に夕陽は沈み 
仕事帰りの電車のドアに凭れて 
車窓に映る街に 
地上の星々の灯る頃 
宵闇の深まる 
家並の隙間から時折聞こえる  
獣の嗚咽に今夜も 
彼は瞳を閉じる 
( わたしはこの国を、
  お前に与えよう・・・ )  
駅の改札から 
吐き出される人々に紛れた彼は 
自らの家がある 
丘の上へと坂道を往く 
振
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)