詩人のシノギ(島崎藤村の巻)/みつべえ
べきや」などは恋の激情をうたって大衆性が高い。この愛唱性と大衆性、そして恋愛詩であることをもって、今でいうところのポエムの源流とみなすこともできるかもしれない。
だが現実では、藤村の青春は悲傷にみちて陰鬱なものであった。
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島崎藤村(1872〜1943年)は、木曾の馬籠(現在の岐阜県中津川市)の島崎家の四男として生まれた。本名は、春樹(はるき)。地方名家の17代当主の父・正樹は国学者だった。その父から『孝経』や『論語』を学ぶ。明治14年には上京し、泰明小学校に通った。三田英学校(現・錦城高校の前身)、共立学校(現・開成高校の前身)を経て、明治学院普通部本科(現・明治学院大学)に
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