待合室のひと/恋月 ぴの
 
しさのなかに浮かび上がってきた

待合室の長椅子から立ち上がり
眩しさに招かれるまま歩みはじめたとき
わたしは気付いた

忌み嫌い取り去ってしまおうと思ったものこそ
わたし自身の総てだと言うことに

どちらへ行こうとしているのですか

背後から看護士さんの声が追ってくるけど
何処へ行こうとしているか
そんなことまで判るぐらいなら
こうして生きている意味なんて無い気がして




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