火の重さ (共作)/クリ
 
おはよう始業前のガソリンスタンドでカラスが歴史をつついている
彼は出発するつもりだ灰色と緑色の朝に スミレ色のまだ微睡んでいる空に
自分がどうすべきかをあまりにも性急に決めてしまったから
喉のあたりにだれかの所有物が刺さって抜けないままだ
嘘にしろ希望にしろ彼の喉にひっかかるだれかの遺骨だし それは
またべつのだれかの所有物だからはやく抜いて返してしまいたいのに
いつまでたっても抜けない 彼はあまりにも性急に出発を決めてしまう


駅前の広場ではアスファルトの殻を破って鳩が孵る 灰色と緑色と
スミレ色の鳩がいくつもいくつも孵る そして置き去りにされる
彼はみつめる でもすぐに
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