たいせつだったひと、/春日
(おとなたちは
刃物は人に向けてはいけないと
人のころしかたは上手におしえてくれたのに
大切なひとのいかしかたは
おしえてくれなかった、)
こまくの上で今一度なみだの音がゆれて、
星の元へ連れられていくみたいだ
亡くなったものが星になるとつぶやいたのは
きっと昔の偉い人だね
遠くへ行ってしまったきみを
呼び戻せないならいみなんてない
連れ戻せないからいみなんてもとめてない
きずだらけの胸ももはや無意味、
瞼が順々に湿度を増してゆく
まつげのなかにしみ込むこの温かさを
ようやく、と表現してもいいのですか
きみのお墓になるべき場所に
桜の木を植えました、
きみのお墓になりました、
わたし、ようやく泣けました
たいせつだったひと、
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