そして、クリームの中で血が滲む/プテラノドン
 
合ペンでもあるー剃刀を
投げつたくって仕方ないもの。或いは、月光の地響きに揺れる鏡に。
そうして身構える自分自身の姿を見て私は気付くのだ。
物書きは、ナイフ投げの曲芸師みたいだということ。
ーそれだけじゃなく、私と客の間にかかる
紙一重の布切れ、蒸したタオルに浮かび上がった
数十行からなる期限つきの主従関係の全貌と、
それを簡単に知らしめる黒い王冠までもが。

私は原始人のサーカス団長であり、真っ黒なシルクハットのかわりに、黒曜石の王冠を頭に載せる。

私は客の注文を聞くと同時に、忠告する。
お前は、一メートルばかし髭をのばすべきだと。
そしてそれがかなったならば、お化け屋敷の
ギロチン椅子に腰掛けて、来るべき時を、
誰かに力任せに髭をグイっと引っ張られる
その時を待つのだと。合図を受けたなら
お前の権利を守るべく全身全霊で眠りから覚め、相手を睨み付け、叫び声をあげて、修復不可能な
数世紀にも及ぶ呪いをかけてやるのだと。
こんな所で客として眠っているくらいなら。
やがてクリームとともに流され、消え去るくらいなら。



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