心の地下室で独りが笑う/うおくきん
地下室で独りが笑い、地下室で一人が怒り、地下室で独りが泣く。
同時刻、地上の街では大勢が笑い、大勢が怒り、大勢が泣く。
そして、独りは、地上の街を悲しむ。
笑いと怒りと泣きの種類が独りとは違うからだ。
独りの心は壊れない、独りだからだ。
ほかの人間との接触がなければ安心して独りは眠りに落ちることができた。
しかし、ある時から眠ることができなくなった。自問自答せよ。わからないはずがない。
大勢に溶けこむ思考停止の弱さと社交辞令の群れを思い出してしまった独りの悲しみと殺意が独りを眠りに落ちることを許さないからだ。大勢の中で自我を保ったまま生きる困難さを独りは知っている。一度挫折したから
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