鴉片/路守 緒世留
逃げ去った陶酔も何もかも、
瞳孔が閉じるのを感じた
冷たい空気を、感じた
奴は走る
息を切らし、
爆発しそうな心臓を抱え、
深い夜を、
たったひとりで、
(――そこでならなにがみえる?)
――世界に溶けて空を飛んでいる俺が見える。
――せかいはどんなかおをしている?
――溶合っちまってるんだから、見えるわけがねえだろう。)
陶酔を求めてはいなかった
血の巡りを感じた
深い青の景色を、感じた
奴は走る
訳も分からず、
発火しそうな脳を抱え、
空っぽの自分、
朝を追い求めて、
たったひとりで
(――そこからはなにがみえた?
――うるさい、
――せかいはどんなかおをしていた?
――うるさいうるさい、ああああ)
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