善悪の部屋/葉leaf
指をすりつぶす音が水になる。椅子にはびっしり僕の名前が書いてある。妄想のわりにはよく動く左足だ。下半身を覆う毛布の毛束は鱗のようで、撫でると白くなり、逆に撫でるともとの緑になる。君は社会の群れを見たことがあるか。足をずるずる引きずって歩く社会の群れを。机の上には書類の輪郭がある。善悪の直線にはもう飽きた。僕は額に垂れ下がってきた髪をわきに寄せる。書類の輪郭に手を通し、文字を指ではじくと、文章は新しく組みかえられる。友人から預かった辞書には、「正義」の一項目だけしかなく、その定義だけで1028ページを費やしている。夢がたるみすぎるとき、夢は痕跡だけが鮮やかで、僕の右脚に不快感を残す。指があと21本足
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