雨/アンテ
 

物置小屋は庭の片隅だ
ああああ
ゆっくりと腹式呼吸する
本当は
望んでいるのかもしれない
縁側に置きっぱなしのバケツの鉢を
土の感触を
指で確かめる
竹馬があれば
物置小屋までたどり着けるだろうか
物干し竿を運んできて
試しに水たまりに突き立ててみる
まだそれほど深くはないはずなのに
どれだけ竿を押し込んでも
地面の感触が返ってこない
あともう少し
完全に沈んでしまう直前に
竿が止まる
なにかが反対側を掴んで
力強く押しもどそうとする
だれかが確かにいる
証拠に
体温を感じる
思わず手を放して
縁側から様子をうかがっていると
竿はしばらく
なにかを探して上下したり
大きな円を描いてから
ぷっつりと水面下に沈んでしまう
それきり静かになる
そういえば
雨音が気にならない
きれいな同心円を作っては
雨粒は水たまりに呑み込まれる
ああああ
新しいお茶を入れる
やれやれ
どうやら水没は免れそうだ
バケツの鉢の
土のうえ
いつの間にか
小さな芽が出ている



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