現実/
舞狐
本の隙間から
ふとした時間の割れ目から
長くあけることのなかった引き出しから
ふいにあの頃のあなたが顔を出した
懐かしさに時間を忘れ
あの頃の自分になってしまう
愛し合って
愛しすぎて
苦しくて別れたふたりがそこに居た
いつか一緒になろうって言ったあなた
でも私の隣には居ない
時計は左には回らないし
砂時計の砂は下に落ちるだけ
だから
目を閉じて
本をしまい
引き出しを閉め
時間を縫い合わせる
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