風になる日に/銀猫
 
湿った夜の破片が
蝙蝠となって折れ線を描く
低く、低く

やがて来る、雨と
灰色の朝は
かなしい、という色に似ている


里山の懐に
ちいさく佇むそこ、は
永遠の黄昏に向かい旅立つ、
煙と風の
始まるところ

  時計の振り子が
  僅かに遅い部屋では
  黒い背景にパールが一粒
  溶けては苦笑い
  にんげんが
  風に変わる瞬間を待つ
  誰かの最期とは
  こんなふうに
  雨だろうか

透明な煙が
雨糸の隙間を縫って
高く、
高いところで風になる


あなたのかたち、に
さようなら。
優しく背中を押す風を
明日は何より愛しく思う




戻る   Point(17)