風になる日に/銀猫
湿った夜の破片が
蝙蝠となって折れ線を描く
低く、低く
やがて来る、雨と
灰色の朝は
かなしい、という色に似ている
里山の懐に
ちいさく佇むそこ、は
永遠の黄昏に向かい旅立つ、
煙と風の
始まるところ
時計の振り子が
僅かに遅い部屋では
黒い背景にパールが一粒
溶けては苦笑い
にんげんが
風に変わる瞬間を待つ
誰かの最期とは
こんなふうに
雨だろうか
透明な煙が
雨糸の隙間を縫って
高く、
高いところで風になる
あなたのかたち、に
さようなら。
優しく背中を押す風を
明日は何より愛しく思う
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