風景に消える心/狩心
傷があるんですと
ナポリタンを体中に塗りたくる
血にもならない やけに薄いオレンジ色で
むしろ夕焼けなんですと
ひき肉やパスタを弾いて
トマトソースの部分だけ残す
ミートソースの間違えでしたと
あなたは言うけれど
あなたの口元からは
コーヒーが零れ出して止まらない 滝のように
段々 体が石へと硬直していくその姿
お地蔵さんにでもなるのかしらと言うけれど
葉っぱが一枚ゆらゆらと
あなたの丸い頭の上に落ちてきた
あなたは涙を流す
誰も言葉を発していない夕焼けで
近所のおばさんがベランダで布団たたきする音と合わせて
胸に響くように
カラスがかぁかぁ言いながら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)