風景に消える心/狩心
 
傷があるんですと
ナポリタンを体中に塗りたくる
血にもならない やけに薄いオレンジ色で
むしろ夕焼けなんですと
ひき肉やパスタを弾いて
トマトソースの部分だけ残す

ミートソースの間違えでしたと
あなたは言うけれど
あなたの口元からは
コーヒーが零れ出して止まらない 滝のように
段々 体が石へと硬直していくその姿
お地蔵さんにでもなるのかしらと言うけれど
葉っぱが一枚ゆらゆらと
あなたの丸い頭の上に落ちてきた

あなたは涙を流す
誰も言葉を発していない夕焼けで
近所のおばさんがベランダで布団たたきする音と合わせて
胸に響くように
カラスがかぁかぁ言いながら
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