Maria /服部 剛
 
車に跳ねられ
長時間の手術を終えた後 
息子が横たわるベッドの傍らで 
涙を堪えながら母は 
布団の脇にこぼれた手を 
握りしめる 
消灯時間を過ぎた夜更けにも 
闘いの後の休息に瞳を閉じる 
息子の寝顔をみつめる母に宿る 
マリアの面影 
時折痛みが顔に出ると 
すかさず結ばれる手と手が 
暗闇にひかりを貫く 
二千年前の遠い異国で 
磔刑の十字架に頭を垂らし 
息絶えた息子の体を 
人々は降ろし 
座ったマリアの膝上に 
包みこまれた息子の亡骸から 
新たないのちの人が 
起き上がる 
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