埋葬/Utakata
 
その新月の夜
庭におおきな 深い穴を掘る

   足元に大きな布の包みがひとつ置いてある

掘り起こされた土は濡れて
手に持ったスコップが地面を突き刺しては
一塊を持ち上げる湿った音だけが
庭に繰り返す

   月がないので いま
   夜明けに近づいていくのか
   深みへと落ちていくのかが分からない

穴を掘り終わったとき、
おもむろに足元の包みを解く
幼かった頃の自分自身の屍が
眼を薄く開いたままで横たわっている
静かに腕に抱いたあとで
自分自身の掘った穴の中へと静かに下ろす
仰向けになっても
新月の夜空には何も見えない

   自分の手で殺した
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