生育暦/つめきり
「なにも着ていないの? ひとつ
あまらせているから、きみにあげる。」
待ちに待った、台風の日です。
家に上げたら、育つのにどのくらいかかるの
か、あと数秒で折れてしまいそうなきみが傘
で部屋を汚しに来る。わたしが傘を脱がせる
と、ふるえてないていた、
頬に触れると、
塩分の味がする。からだはちいさくて水の味
を知らないであろう。手を上げて、届かない
あめ粒をくちびるに、あててあげた。
わるい天気に感染して、病んでいるばさばさ
のくさばなが、きみを見ていっきに
わらいだすから
日が落ちても、きみはまだ玄関にかくれてい
る。人工の光はきしきしするからそんなとこ
ろに
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