想い思う夕暮れ/舞狐
こんな夕暮れは
たまに
たまになんだけど
あなたに逢えることが嬉しくてしかたなかった頃の私が戻ってきてね
ふたりで駈け落ち気分で出かけた場所を思い出すの
嬉しくて切なくて
楽しかった時間
一瞬思い出すけど
私は首を振りながら
それをかき消すの
知らないままでいたかった
現実を知らないままだったらいい思い出だったけど
あなたからもらった現実って名前の眼鏡
かけて思い出見てみたら
まったく違う色に見えるんだもの
あまりに辛いから、悔しいから
思い出は
もうしまっちゃったの
心の箱に
こんなふうに暖かくなると
あの日の思い出が 箱の中でカタカタ騒いで
知らせるの
忘れないでって
カタカタ
コトコト
でも
一瞬にして現実に戻るのよ
目の前の あなたそっくりな幼い少年が
くりくりとした丸い目で
まっすぐ私を見つめ微笑んでいるのに気付いたとき
これが幸せなのかもしれないと
思い知らされるの
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