睡蓮の池/水町綜助
離があって
それは走り抜けるバスのように
こみあげて
近づいて
僕の髪を持ち上げて
頬を掠めるときには
きっと睡蓮の池として静まっていて
波紋のひとつもたてない
僕はそんなたしかな
間違いを過ごして
何度目か
いま安心しているんだろう
それはもう誰にも
回答されない
だから消えて
消えたから
安心だろ
静かなんだ
池の絵は
ほんとうに
何色も油彩絵の具は厚く
流されて渦を巻くけれど
静かで
それが僕には
夕暮れ花屋の横を走り抜けるバスで
たくさんの人を乗せて
騒がしくて
でもそれは静かな池で
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