春と月と やわらかな旅立ち/もも うさぎ
 
昔 父さんが庭の木に作ってくれたブランコに
僕たち兄弟が並んで

そうやって
毎日 そうやって暮れるまで

永遠に思えるような時間を過ごした

季節が変わるたびに
短くなっていくのだと

気づいたら立ち消えていた それらは



みんな 一体 どこにいってしまったのだろう






ベッドに目をやれば
月明かりの下
きみがすやすやと眠っている

僕は


そうだな、僕は

たぶん、行くところがある


行かなくてはならない、と説明しても
きっときみは泣くんだろう

そのときは
小さなきみに預けてある僕の半身を
きみは僕に返さなきゃならない


そして僕はきみの半身を


きみ自身の人生に 返してあげなきゃいけないんだ








〜春と月と やわらかな旅立ち〜

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