野球観戦/小川 葉
 
野球を見に行った

試合の途中
本日の入場者数がアナウンスされて
僕が生まれ育った町の人口ほどだった

思わず観客席を見回すと
そこには
懐かしい人ばかりいるような気がした

当時親友だった人が
三十九歳になったような感じだった
面影はあるのに
少し目が違っていた

それでも何度か目が合った
合うたびに
その目はあの頃の目になった

試合が終われば
みんなこの町を去ってしまう
そして懐かしむようにまたいつか
この町に帰ってくる

町長は野村さんという人だった
試合に勝って
町のみんなに挨拶してる

笑い方が
僕の父さんに似ていた
おそらくみんなそう思って
拍手してる

人違いだったのに
いつのまにか
一緒に拍手してる
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