歪む/ポッケ
ケータイに着信があった
番号は出ず、NOKIAと表示されていた
もしかしたらと思って
電話に出て「はい」とだけ応えた
聞きたかった声がわたしの名前を呼んだ
わからないフリをして「誰?」と尋ねる
あの人は構わずいつものように会話を続ける
周りの喧騒が邪魔で
声が聞き取りづらい
ちょっと、まって
わたしはケータイを耳に押し当てたまま
人混みをぬけ少しでも雑音が入らないところを探す
それでもノイズが大きくなり
とうとう切れる電話
祈るような気持ちで
番号の出ていない着信履歴を辿ってリダイヤルする
呼び出し音が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)