遺書/山中 烏流
 

今度は迷わずに
抱きしめること
 
 
家に帰ったら
お気に入りのこんぺいとうを
三粒食べてから
眠りにつくこと
 
次の朝が来る前に
必ず、自らを
 
 
 
 ・いつかの話
 
 
長く長く伸びた爪を
爪切りが
見当たらないので
噛み切ってみます
多分
血は出たりしません
代わりに
記憶が流れたりします
 
そのうちの
一雫に触れたりして
ひとしきり遊んだあとは
幼子のように
また
眠りにつくことでしょう
 
 
そしてどうか、
そのあとは
起こさないで下さい
そして
見ないふりをして
そっと
その場を立ち去って下さい
 
何か、透明なものが
伝ったとしても
全て気のせいですから
 
 
忘れて、下さい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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