「海がひろがる」/
ベンジャミン
誰もいない教室で
机の落書きを消す
たいていが内容の無いもので
消すのにためらうこともないのだが
ふと窓をみると
結露したときに指で書いたのだろう
一つの文字が見えた
「海」
おそらく暗くなってから
何となく書いたのだろう
「海」
という文字が
真昼の誰もいない教室に
うっすらと浮かび上がっている
その先にひろがる青空が
まるで海だというように
僕は少し考えて
見えない海を眺めながら
それは消さずに残しておいた
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