ふしあわせなドーリー/ふたば
とがなかったのではないか
兄弟のいないせいなんかじゃなくて
まるでじぶんの人生を
小さな古本屋の棚にでも置きっぱなしにしてる
書き手も読み手もどこかの誰かで
花屋の娘と結婚しても
ドーリーはひとりぼっち
高台に大きなお家を買った
奥さんは裁縫とお掃除が得意で
彼はじぶんにおめでとうって言って
ありがとうもちゃんと言う
お隣りのような喧嘩なんてしたことがない
可愛い男の子が生まれたあとも
ドーリーはやっぱりドーリーのまま
じぶんとそっくりにわらう顔が
堪らず恐ろしくなったもので
行きたいところがあるわけでもなく
そのうち帰ってこなくなっちゃった
旅先でからだごとおかしくしちゃった
ドーリーがひとりぼっちで死んだあと
大きな時計台には何も変化が訪れない
町の古本屋が珍しく掃除をしたくらい
公園の絵描きは少し名前が売れるようになって
ドーリーの絵は「しあわせな男」という題を付けられて
美術館の廊下の隅に飾られている
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