希代美人抄/aidanico
 
楊貴妃の流し目の、
紅差す頬に惚れちまった。
ああわが心の疱瘡よ、
今直ぐに掻き毟りぼろぼろになって、
あなたの裳裾に縋り付きたい。

小町の麻呂眉の、
細い目尻に惚れちまった。
ああわが親指の乾き、
ばりばりに成るまでに干上がって、
あなたの中を渇望したい。

クレオパトラの黒髪の、
馨る毛先に惚れちまった。
ああわが鼻の太陽の熱の炎症、
地熱の海に抗って、
気丈の首に巻き付きたい。

あんたの白い、
その二の腕に惚れちまった。
ああわが掌の疼き、
海から孵った蛸のように、
星の数ほどの吸盤で
あなたの肌に吸い付きたい。
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