桜ときみと、ひとさしゆび/銀猫
ふわ、り
風に追われた桜
川面にちいさな州を作り
その薄紅のしたを
きみの遠い息遣いが流れる
いつか
それはシロツメクサの匂い立つなかで
流れていたのと、きっと同じ
けれど今日は
不思議な一線が引かれている
春はいつも
きみのかたちをしていた
さびしい、と口にしながら
枝に残る桜のひとつを
ひとさしゆび、となかゆびで挟んで
このまま少しだけ
ちからを入れたなら
きっとそれは真実に、
思い出に変わるだろう
わたしのこころは
流れの遥かを越えた向こうに
忘れてきたらしい
ためらい、
ちぎる、
さくら、
指先が
四月
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