『ぬるい包丁』/しめじ
私は逃げた女も男も殺してやろうと包丁を握りしめて立っていた。
すると戸を叩くものがあった。間が悪いことこの上ないなと思って居留守を決め込んでいると、鍵が回って戸が開いた。
戸の外には色の白い美しい女が立っていた。女は黙って私の持つ包丁を見ている。私は取り繕うようにしてまな板の上のにんにくを刻みだした。台所ににんにくの匂いが広がる。女は長い髪を揺らしながら微笑んでいた。小さい顔に似合わない真っ赤な紅を差していた。
「お水をいただけるかしら」
女は勝手に寝室に上がり込んでベッドに横になる。むき出しになったふくらはぎがとても白い。ずいぶんぞんざいな態度だなあと思うが水を汲
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