墓標に唄えば/灯兎
 
 いるの
君はいま どこで だれと なにをしているんだろう
思うだけで ぼやくこともできず 開かない門とたたずむ

少しだけ寒いね カーディガンを羽織って
言った君を
引きとめることができなかった僕には しけた煙草が似合いだろう

君が見たがっていた花が いささか耽美にすぎるくらい
咲き誇っているというのに
僕はひとり 昔と変わらないままでいる 

あたりまえにかわしたキスは
きっと
君がくれた奇跡なんだろう

クローズハーモニーの官能が 頭に響いて
甘美なのは何も絶望だけじゃない そう気づいた夜

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