墓標に唄えば/灯兎
星座が分からないくらいの 夜空を見上げ
唇にはさんだフィルタが熱をもちはじめるまで
ぶらぶらと 墓の上を歩いている
葉桜の季節によせて 君を唄うということ
それだけで今の僕には 充分すぎるほどに
だけど何か何か 何か違う 何か足りない
薄紅にまじるノイズが なんだか愛しくて
そんなことは たいした問題じゃないけど
そう思えるまでの時間は まるでえいえん
とっくに花は終わっているのに また朝がどうしようもなくやってくる
夜風の涼しさを嫌っているみたいに あなたの優しさを避けたみたいに
桃を溶かしたジンを舐めては 花びらをすくいあげるみたいに
ねえ どこに い
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