表題「絵描きはどこかへ行った」/はゆおりいと
からが樹の枝なのか、混ざり合っていてよくわからない)
表情は見えない。
(もう生きていないものは笑ったりしない)
あるとき、彼女は殺された。
あるとき、彼女は子供だった。
あるとき、彼女は魚だった。
あるとき、彼女は世界の何物よりも大きくて、手のひらに載せた珪石がまるで魔法の宝
石みたいで、だから下らない大人たちをみんなその小さな石の中に閉じ込めてしまおうと
思い立った。
空一面を青色で塗った。
青い月明かりで、世界は水底に沈んでいる。
それはピアノの鍵盤のようになめらかで、けれど水晶のように尖って痛い、作り物の瞳
では見通せない深遠を抱えたかつて物語だった
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