毒蜘蛛とキス/chi-ha
 
ほの暗い部屋の中でひとり
君との間に壁ができた気がして
布一枚敷いて寝転んでみた
目に映るのは腕越しに見える
ガラスを通して射す月の光だけで
それが消え入りそうにか細く綺麗で
ひたすら無心で見続けたんだ
ふと上を見上げると
仄かに青く照らされた壁に黒い影ひとつ
それが無性に怖くって
腕に顔を埋めて静かに泣いた
心配してかけつけたのは優しい毒蜘蛛
なんでもないとそっぽ向くあたしに
真っ白な糸を吹きつけキスをした
毒蜘蛛とあたしも君とあたしの距離も一緒
透けるほど白い蜘蛛の糸ほどしかないよ
錯覚をしたのはきっとあたし
だから君の腕に甘く強く噛りついて
蜘蛛が蝶に語るように愛を囁くの
まだこの糸を離したくないと
戻る   Point(1)