マンタレイの夜/mizu K
夜のしずかなさんごの
いきをひそめる宵闇夜
青ぐろい街の空を
マンタレイが滑空するころ
天体望遠鏡をのぞきこんでいた
ちいさな天文学者は
ベランダで眠りこけて
あのちいさな星からの何万年も前のひかり
いまはあの星は
存在しないかもしれないんだ
ぼくのおもいがあの子にとどくころ
もうぼくは
存在しないのかもしれないんだ
しれないの
しれないんだよ
かなしいかい?
そう
マンタレイは
ゆうゆうと空をすべりながら
いう
きみが死んでも
世界はあんまりかわらない
すこし涙するひとがいるくらいで
世界は
あんまりかわらないけど
ちょっとずつか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)