「こんな日はくまちゃんに会いたいのに。」/rabbitfighter
 

口許から思わずこぼれそうになった思い出を飲み込む
誰も拾ってくれないから
こぼれてしまったらいなくなってしまうような気がして
いなくなってしまうような気がして
あわてて飲み込んだら
なんだか変な味がした
そういえば誰かが言っていた
さくらの花を見たときに感じる思いは
初恋の時に抱く思いに似てるんだって
初恋っていつだっけ
席替えのたびに隣になる女の子を一々好きになっていたせいで
初恋なんてとっくにどこかに忘れてきたんだと思ってたよ、くまちゃん。
思い出の話をしたいんだ
手漕ぎボートに乗りながら
堀の水に浮かんだりしながらさ
時間つぶしのためにするようなものじゃなく
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