遠い産声/朽木 裕
モノトーンの殺意に時折襲われる
自分自身への殺意
死はゼロか?否。
肉体が消えたのならゼロには限りなく近い
だがそれは別次元であって
生まれる前に時が戻ったわけではない
「それ」は「そこ」に存在していた
そう、確かに。
遠い山奥まで車を飛ばして
足を踏み入れた場所
沈殿する空気 水 光 生命
この場所はこんなにも
死んでいる 死んでいる 死んでいる
それなのにこんなにも
生きている 生きている 生きている
足を踏み抜かないように
軋む地面を進み、辿りついた白い部屋
ゆっくりと進む
部屋の中央で胎児のように丸くなる
遠い産声がきこえる
戻る 編 削 Point(2)