遠い産声/朽木 裕
 
モノトーンの殺意に時折襲われる
自分自身への殺意

死はゼロか?否。
肉体が消えたのならゼロには限りなく近い
だがそれは別次元であって
生まれる前に時が戻ったわけではない

「それ」は「そこ」に存在していた
そう、確かに。

遠い山奥まで車を飛ばして
足を踏み入れた場所

沈殿する空気 水 光 生命

この場所はこんなにも
死んでいる 死んでいる 死んでいる

それなのにこんなにも
生きている 生きている 生きている

足を踏み抜かないように
軋む地面を進み、辿りついた白い部屋

ゆっくりと進む

部屋の中央で胎児のように丸くなる




遠い産声がきこえる
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