膨らむ図書館/ケンディ
じ境遇の者たちも、
どこかではまり込んでいるにちがいないが、
探しに行っても、ただ図書館を膨張させるだけだ。
僕は完全に諦めてしまった。
だからもう、この図書館から抜け出すことはできない。
隣のジャンルのエリアに移ることはできそうだ。微分的には。
哲学のエリアにいる僕は、心理学のエリアに移ろうとした。
予想通り、図書館は膨張した。哲学のエリアは膨張し、
哲学の心理学的分野が生まれる。
また移動しようとすると、哲学の心理学的分野は
さらに膨張してジャンルは細分化されるだろう。
しかし一気にこの図書館から脱出することはもう不可能だ。
こんなことを考えている間に、いっそのこと自分の
今思っていることを紙に書いて、この図書館を
膨張させてやろう。
そして、ここで朽ち果てようと思う。
以上が僕の考えたことのまとめだ。
僕の言語行為が、この図書館のどこかでアーカイブとして
蓄積されたと思うと、少し希望が持てる。
この紙片をここでいつか誰かが読んで、
図書館はさらに膨張されるのだろう。
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