紫桜前線/蒸発王
た卒業文集を見つけることも無かっただろう
こんな
こと
訃報が届いたのは
桜が満開になる直前だった
就職活動で着慣れたリクルートスーツは
ネクタイの色を変えるだけで
信じられないくらい息苦しくなった
何年かぶりにあった叔母さんは
ものすごく年をとったようで
まだ学生なのに
そんな言葉が
塩辛い吐息とともに
会場中にあふれかえっていた
夜が更けて
一階の居間では宴会が開かれたが
下戸だったから
僕は二階へ待避していた
その廊下に
ひとまとめにされた
彼女の遺品と
いつしかの卒業文集があった
自分も含め
書いてあ
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