「 かいり。 」/PULL.
 
充血している。かいりは泣いていて、あたしも泣いていた。重なったからだから、かいりが伝わってくる。あたしよりも少しあたたかい、かいりの体温。あたしは熱くなって、赤く、なっていた。あたしの中の赤いものは止まらず、ぐるぐると、さらに混乱していた。やがてあたしの中の混乱はあふれだし、かいりの口を、塞いだ。かいりの舌があたしの唇を濡らし、あたしの舌がかいりの中を、濡らした。


五。

 結局、あたしたちが交わし合ったのはあの夜だけで、それからはどちらともなく、遠ざかって、いった。満たされて、満たされすぎたものは、もうこぼれるしかない。あの夜あたしたちは満たされて、こぼれて、インポオンナになってし
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