声/海渡
あの春から随分経って
ボクは未だ皆と会うけれど
キミの声だけ思い出せなくて
それなのに何故か
笑った顔とか泣いた顔とか
小さな仕草とか
そんな事は思い出せるんだ
もうボク達は終わってしまったけど
今でもはっきり言えるのは
キミは素敵な人だった
そして弱い人だった…
どんな事で喧嘩したとか
どんなデートをしたとか
そんな事は覚えてるのに
キミの声が思い出せないんだ
切なくて、苦しくなる…
いつだって強がってみせてたキミだけど
本当は誰よりも弱かった
ボクはそんなキミが愛しかったんだ
いつかまた逢えればいい
そしたら今度はキミの声を覚えられるかな
あの春の暖かさに似た温もりを思わせる
優しい声を…
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