星降る夜/セキラボ!
 



マモルの呼吸は光る
 
 
学校のうさぎが死んだ日
マモルは自分の呼吸が時々
光の礫(つぶて)になるのを知った
 
 
マモルは決して泣かない子だった
 
 
おかあさんが居なくなった時
マモルは言葉を胸に溜めていた
けれども
呼吸は光っていた
ことを父は知っていた

黙って酒を飲むしかなかった
 
 
 
ある日
海岸沿いの防波堤に腰掛け
マモルは誰にも見えないように
うずくまり
そっと息を吐いた
まるで咽び泣くように
呼吸は、光った
 
 
 
マモルはいつも空を見上げた
 
 
空には
風化してしまったつぶてと
物語が渦を蒔いて
マモルは
屋根の上で
星を数えている
ことを父は知っている
そして
黙って酒を飲んで
空を思う
 
 
マモルは静かに
空を見上げて
息を吐いた
まるで
星の降る夜だと
小さな体は
やさしくふるえる
 
 
 
 


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