最終兵器核家族/人間
旋盤工の父は
若い頃に失くした左手薬指の
近位指節間関節から先を西日に透かし
今にも落っこちそうな細い指輪が後光のような部分日食に変わり
そこから風上の藪のように散るキリコに似た物陰に埋もれました
准看護師の母は
ヤカンに沸くドクダミ茶の香りに寄り掛かり
棒になって冷えきった足を重ねつつ
皺くちゃの重いまぶたを支え
自らの呼吸に聞き入いるような格好のまま燻製された肉塊になりました
物陰の腐葉土と香り立つ肉塊との間に架けられた思い出の
ささやかな結び目に私は生まれ
その内角の足りない三角形をカルキ臭い生活水に浸すと
熱を出し 泡を吹き 朧な家族となっていきました
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