痙攣する舌先/しめじ
舌先で春を捜している
鳥居に差し込んだ陽光に瞬きを繰り返しながら
カタツムリがミシンの上で踊っている
風に乗った時計の短針を
追いかける人々の手にはハンマー
舌先で春を捜している
電熱線の上に置かれた瑠璃ガラスの最期
真っ二つにされた哀しみに
祈りを捧げる家族の遺影
道路には日めくりが踏みつけられている
舌先で春を捜している
冷たい指先に触れた油彩画
影絵のようなロータスが線路の中で揺れている
飛びたいだけなのに
方向指示器の余熱により発火した
遠い記憶を酒瓶に詰めて
私は旅に出る
舌先で春を捜している
紙垂に巻かれた眼球が切ない
路上には緑色の壁面が泳いでいる
噴水に吸い込まれて出会ったあなたと一緒に
水色の三角フラスコの中
アネモネを口渡しする磁場
その記憶を頼りに
舌先で春を捜している
痙攣する舌先で
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